やわらかく、なめらかで、口に入れた瞬間にとろける生チョコレート。
バレンタインシーズンには手作りをする方も多いのではないでしょうか。
今では「生チョコ」と呼ばれ、日本のみならず世界各国でも親しまれているこのチョコレートは、1988年(昭和63年)、シルスマリアの厨房で生み出されたのが始まりです。
1982年(昭和57年)、スイス洋菓子店として神奈川県平塚市に創業したシルスマリア。
店名はスイス東南部・エンガディン地方にあるシルス村に由来します。アルプスの雄大な山々と、美しい湖に囲まれたこの村の中心地はシルスマリアと呼ばれており、緑あふれる丘や澄んだ小川が流れる風光明媚な場所です。
伝統手法で描かれた外壁の家屋も多くあり、かわいらしい街並みも特徴的。この地の魅力をも感じていただけるようにと、創業店である平塚店はシルスマリアの山小屋をモチーフに造られました。
生チョコレートが誕生する前、シルスマリアではチョコレート菓子や焼き菓子、ケーキなどを中心に販売していました。特に人気を集めていたのは、刻んだ栗とたっぷりの生クリームにカスタードクリームを混ぜ合わせ、サクサクのパイ生地で包み込んだ『生パイ ベルク』。令和の今もなお各店舗で愛され続けているお菓子です。
一方、当時のパティシエ、ショコラティエはチョコレートの可能性を追求し続けていました。それまでのチョコレートは板チョコレートをはじめ、ナッツやビスケットにチョコレートをかけたお菓子など、かたい食感のものが主流でした。時を同じくしてチョコレート専門店で販売され始めていたボンボンショコラやトリュフも、内側のやわらかいガナッシュをチョコレートでコーティングしたもの。
「もっと、口に入れた瞬間にとろけるような、なめらかに後味をひく、そんな味わいのチョコレートを作ることはできないものか」
目指したのは外側のコーティングを敢えてせず、やわらかなガナッシュのみをそのままお客様に楽しんでいただけるチョコレート。来る日も来る日も「溶かして、混ぜて、冷やす」を繰り返し、試行錯誤を続けた末、あるひとつの真実に辿り着きました。
それは、カカオに含まれる油脂成分「カカオバター」の性質を深く理解し、最適な温度で作り上げること。
ゆっくりと時間をかけて溶かしたチョコレートに、一定の温度に調整したクリームを流し込み、成型して固めていく。チョコレートの結晶を壊さないように注意しながら、クリームをたっぷりとなじませることで、濃厚でありながら口の中でやわらかく溶ける画期的な風味と食感を持ったチョコレートが誕生したのです。
このチョコレートはフレッシュなクリームを使うこと、そして当時からの人気商品、『生パイ ベルク』にちなんで「生チョコレート」と名付けられました。最初に発売した『公園通りの石畳 シルスミルク』は、その美味しさからクチコミが拡がり、やがて一大ブームに。今では誰もが知るチョコレート・スイーツとして定着し、シルスマリアは「生チョコ発祥の店」として知られるようになりました。
日本での生チョコレートの定義は、「溶かしたチョコレートのうちクリームを10%以上加えたもの」(*)。シルスマリアではフレッシュなクリームだけでなく、ウイスキーやシャンパン、紅茶などさまざまなフレーバーが楽しめる商品も揃えています。
ア)
チョコレート生地にクリームを含む含水可食物を練り込んだもののうち、チョコレート生地が全重量の60%以上、かつクリームが全重量の10%以上のものであって、水分が全重量の10%以上であること
イ)
アに適合するチョコレートにココアパウダー、粉糖、抹茶等の粉体可食物をかけたもの、又はチョコレート生地で殻を作り、内部に前号に適合するチョコレートを入れたものであって、当該チョコレートが全重量の60%以上、かつチョコレート生地の重量が全重量の40%以上であること
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/chocolate.pdf